出張中につきネタ無し。茨城新聞の鹿島鉄道でのBDFの記事など(9/17)2006年09月17日 22:26

 宿の最寄り駅から京浜東北に揺られ東京駅最寄の現場へ。
 17時過ぎには作業を終了し、近くの喫茶店で打ち合わせの後、宿へ戻る。午後になって雨が降ってきてしまった。関東は未だ良いが、九州では台風による突風で脱線転覆事故が発生するなど大変なことになっているらしい。485系はここのところ突風で転がる事故が2件続いてしまいなんとなく可哀想に思える。

 宿で茨城新聞のWeb版をチェックすると、下記のような記事が出ていた。
( http://www.ibaraki-np.co.jp/main/weekly.htm )
[茨城新聞のWeb記事は1週間で消失するが難点だが]
 沿線の耕作放棄地で菜種や向日葵を栽培し、取れる食用油の調理後の廃油をBDF(平たく言うと代替軽油)化して、鹿島鉄道の運行や公用車に使うプロジェクトに関する記事だった。

 鹿島鉄道でのBDFについては、昨年の10月に常陸小川駅で地元の『cafe@kybo』(http://www8.plala.or.jp/cafe_kybo_jp/)が主催した『かしてつ常陸小川発・菜の花畑を走る鉄道に』というイベントがあり、その中で、特別行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構中央農業総合研究センター(中央農研)作業技術研究部農産エネルギー研究室(http://pc140.narcc.affrc.go.jp/sagyo/energy/energy.html)室長の谷脇憲氏がBDFに関する公演を行ったのにたまたま居合わせたりしたこともあるのだが、茨城新聞に載った記事の内容はその時聞いた、海のものとも山のものともつかない話よりは多少は具体的なものではあった。

 ただ、耕作放棄地を沿線4市の3232haとしている辺りは、従来の沿線自治体が石岡市・玉里村・小川町・玉造町・鉾田町だったのに対して、これに八郷町・美野里町・大洋村・旭村・北浦村・麻生町をくっつけた訳だから、過大な見積もりと言えば過大な見積もりである。
 ちなみに、旧自治体での沿線5市町村の平成2年から平成12年までの間の経営耕地面積の減少分は1153haである。鹿島鉄道沿線と言えるエリアの耕作放棄地の面積として考えるなら300haくらいと見るのが妥当な線ではないだろうか。まぁ少しでも大きい数字を言いたい気持ちは判るが。

 鹿島鉄道での毎年の軽油の消費量は鉄道統計年報の記載からだいたい毎年300klほどである。BDFを300kl生産するために必要な廃食用油の量は435klほど、これを生産するのに必要な耕地面積は、約150hrとなり、300hrでBDFを栽培した場合その半分は鹿島鉄道向けとなり残り半分が他の公共用の移動手段向けということになる。

 以上から考えれば、数字的には確かに可能な数字であり、モデル事業と
して車両のBDF対応改造支援などに対して補助金を付けられるのならまぁ出来ない話では無いということになる。

 だが、しかし、この計算を初めてした時には、正直、目の前が真っ暗になった。
 数億年をかけて地中に固定化された二酸化炭素を大気中に開放してしまう化石燃料を使用するサイクルから、植物由来燃料を使用し炭素循環の中に炭素を固定するカーボンニュートラルなサイクルへと転換するとしたとき、150hrもの耕地は、鹿島鉄道を維持することしか出来ない程度の燃料しか生産し得ないのだ。
 軽油とガソリンでは1リットル当りの二酸化炭素の排出量は厳密に言えば異なるが、燃費10km/lの常用車で年間10000km走るとすると使用する燃料は年間1klである。
 上記の1135hrとして常用車1135台分、茨城新聞の記事の3232hrとしても3232台分の燃料しかこの地域の休耕地の活用では賄えないのだ。
 つまり現実問題として、BDFだけでは現状の自動車社会をカーボンニュートラルなサイクルとして支えることは、事実上不可能なのだ。

 一見薔薇色のように読める記事だが、実際はその逆である。
 たとえBDFを導入しようとも、現時点での移動水準をこれからも維持し続けていくには、いずれ枯渇する化石燃料を燃焼させて二酸化炭素を大気中に放出する自家用車を使わざるを得ないのだ。
 逆の言い方をすれば、我々が今自家用車から得ている利便性と地球の炭素サイクルとの収支は、現在の時点で常に赤字であり、いくらBDFを導入しようとも、利便性を現在のレベルで維持する限りは、その累積赤字は雪だるま式に増えていくしかないのだ。

 では、せめて収支をトントンにするために、我々は現在の利便性を捨てる事が果たしてできるのか? 本当に気の滅入る話である。

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